AI(人工知能)を取り巻く世界は、年明けと同時に様々な業界が爆発的な展開を見せています!
AIの巨頭と言われるGoogle社とOpenAI社は次々と画期的な発表を行い、全世界に向けて新モデルを公開しました。OpenAI社は「OPEN AIの12日間」というキャンペーンを展開し、12日間、毎日新たな発表を行いました。一方Google社もその動きを追随し、AI業界は競争の激化が一層加速され、前例のない状態となりつつあります。こうした競争戦争の凄さを象徴するのが、GoogleのVEO2ビデオのサプライズ発表でした。この発表は、多くの話題を集め発表が期待されていたOPEN AIのSORAビデオが発表されたわずか数時間後に公開され、世間に大きな衝撃をもたらしました。
さらにGoogleの快進撃は止まることなく続きました。下記に示すAIエコシステム全体にわたる最先端の進化を次々と発表し、AI競争をさらに激化させました。
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これらの発表によってGoogle社は業界における進化革命のハードルを引き上げただけではなく、ユーザーの作業に応じてシームレスに統合できるツールを創出しました。新製品の発表によってAI競争はさらに激化し、業界全体が次のレベルへと進化してゆく時代が到来しています。
そしてDeepSeek R1が登場
2025年の幕開けとともに、業界に新たな旋風を巻き起こす新商品が登場しました。比較的小規模な中国のスタートアップ企業が、わずか550万ドル(約8.5億円)の予算で「チェーン·オブ·ソート(Chain-of-Thought)」推論AIモデル DeepSeek R1 を発表したのです。この開発は、「より大規模な資本投入がより優れたモデルを生み出す」というこれまでの常識を覆しました。DeepSeek R1の登場は、全世界のAI業界に衝撃を与え、特に米国市場では 20億ドル規模の市場混乱を引き起こしました。その影響を最も受けたのは Nvidia です。しかし、なぜこうした技術革新がここまでの大きな波紋を広げたのでしょうか? その理由を詳しく見ていきましょう。
DeepSeek R1が業界を大きく変える存在である理由
- コストの壁を打破
DeepSeek R1発売以前は、最先端 (SOTA) AIモデルを学習させるために必要なコストは数十億ドル規模(訳註:10億ドルは154円換算でおよそ1540億円)のインフラ整備、計算能力開発、エネルギーが必要だと考えられていました。一方で、DeepSeekは、従来かかる費用のほんの一部にしか該当しないわずか550万ドル(1$154円換算で約8.5億円)でこれらを実現し、しかも、たったの半年間で完成させました。 - テスト時の計算処理を極めた存在
OpenAIのo1モデルは 回答を生成する前に「考える」時間を増やすテスト時の計算処理、という概念を確立しました。このアプローチは有効でしたが、DeepSeek R1ほどこの概念を上手に活用し、さらにはこれを超えたモデルは今までに存在していませんでした。 - ユーザーへの訴求力
DeepSeekは強力モデルの開発だけではなく、競合するOpenAIのChatGPTに対抗するために独自のポータルサイトやモバイルアプリをリリースしました。その結果、驚くべきことに現在では、DeepSeekのアプリダウンロード数は米国市場において、ChatGPTを上回っています。 - 驚くべきAPI価格設定
DeepSeekは、OpenAIのAPIと完全に互換性を持つAPIサービスを提供し、直接的な代替手段として市場に参入を果たしました。さらに画期的なのは、そのサービス価格は、Open AIのo1モデルと比べると平均で95%も低コストで提供されている点です。 - オープンソースの頂点
DeepSeekは、新たな最先端(SOTA)モデルを提供するだけではなく、MITライセンスの元でソースを公開しました。これによって世界中の誰もが無料で、さらには商用利用できることを可能にしたのです。 - 数値データ(ウェイト)の公開と研究へのアクセシビリティ
DeepSeekはモデルの公開に加えて、モデルのパラメータ(数値データ)や詳細な研究論文、学習プロセスのガイドラインも提供したため、他の開発者たちが容易に同様のモデルを再現できるようになりました。 - 優れた蒸留技術
DeepSeekはMeta社のLlamaモデルやQwenモデルを元に蒸留技術(訳註:大規模な高性能AIモデルが持つ知識をより小型で軽量なAIモデルに圧縮して転移する技術)を開発しました。小型ながら非常に高性能で、わずか70億パラメータ(7B)バージョンでも、OpenAIのGPT-4oを上回る性能を発揮しています。まさにAI開発における大きな指標となりました。
AI戦争への影響
米国と中国におけるAI開発競争は、DeepSeekの画期的な成果によって白熱し、激化しました。この革新は、これまで常識と思われてきた計算能力、制作費用の概念を大きく覆し、AI業界の根本を揺るがす大きな変化をもたらしたのです。そしてその影響は、世界経済全体に波及しています。
個人的見解
DeepSeekの実績は間違いなく素晴らしいものですが、いくつか考慮すべき点もあると考えます。DeepSeek R1はOpenAIのo1モデルが持つ推論能力を驚くほど忠実に再現していますが、稀に自身の存在をOpenAIモデルと誤認識するケースが報告されています。つまり、R1の学習データにOpenAIモデルからの出力が含まれていた可能性を示唆しており、大きな懸念事項です。そもそも、AI分野における新たな革新的発明こそが、最も多くの資源とコストを必要とします。もしDeepSeek R1開発がすでに存在する先行モデルの影響を受けて開発されたのであれば、Open AIのo1とDeepSeek R1両者の学習開発に関わるコストの差は理解できるものであり、額面だけを見て圧倒的なコスト削減を実現した、とは一概に言えないかもしれません。
また市場では「AI革命の主導権は米国企業から中国企業へ」との見方が強まっていますが、実際の状況はそれほど単純なものではありません。一例としてNvidia(米国)は依然として世界最大のGPUプロバイダーであり、競合他社に対して大きな技術的優位性を維持し続けています。さらに、米国政府による新たな規制措置によって、AIモデルの学習や推論技術において米国企業側に戦略的な優位性をもたらし、AI競争における米国の優勢を確保してゆく可能性が示唆されます。
加えてOpenAIはすでに次世代モデルとなるo3シリーズの開発を発表しており、その推論能力はo1シリーズを大幅に上回ると予想されています。当然ながら、DeepSeek R1もその進化の波にさらされることになるでしょう。このような競合する開発により、AIの推論能力の定義、基準が再定義され、競争環境はさらに活発化してゆくと考えられます。
AI業界の競争はまだ始まったばかりであり、今後更なる革新や新製品が続々と登場することは確実です。グローバルなAI企業による競争が激化するにつれ、技術革新はさらに加速し、最終的には関係各社だけにとどまらず、世界全体にとって有益な未来が開かれてゆくことが期待されます。
VAI OSの業界内のポジション
VAI OSでは進化し続けるAI競争をワクワクしながら注視しています。ポップコーン片手に場外スタンドで激化戦争を観戦しているような気分です。つまり、私たちはAI大企業に対抗して競合しゆくことを目指しているのではなく、柔軟性・適応性・協調性を重視したプラットフォームの構築に注力しています。私たちの目標は、最新の最先端(SOTA)モデルを活用し、その能力を最大限に引き出す広範囲のエコシステムを創出することです。中国、アメリカ、あるいは、オープンソース、独自開発、あらゆる選択肢の中で、新たなSOTAモデルが登場するたびに、VAI OSのプラグ&プレイ型構造内に最新技術を統合し、活用できる仕組みになっています。言い換えれば、多くの企業によって、より効率的なAIモデルが生み出されることで、私たちは技術革新をさらに推進し、VAI OSは常に最新の技術を取り入れることでAIシステムの能力を進化させているのです。
AI技術の進歩は目覚ましく、その加速はもはや疑う余地はありません。こうした時代の流れに完全に対応できる準備を、私たちはすでに整えています。VAI OSは特定のAIモデルだけに依存するのではなく、あらゆる開発者の最新技術を活用できるモデル·アグのスティック設計(様々なAIモデルを柔軟に利用できる設計)を採用しているため、常に最先端のツールや技術をユーザーに提供することが可能です。この戦略的アプローチによって、システムの将来性は保証され、さらには常に進化し続けるAIエコシステムを育む、という私たちVAI OSのビジョンにも一致します。世界的なAI競争がさらに加速し、境界を押し広げてゆく中で、VAI OSは適応力を最大の武器として成長し続けます。そして、業界の最新技術を取り入れながら、ユーザーに最先端の体験を提供し続けることにコミットしてまいります。
まとめ
AI業界は、かつてない競争の激化、それに伴う革新によって新たな領域、時代へと突入しています。DeepSeek R1のような画期的な技術革新の登場で、AIの未来は今まさに私たちの目の前で、日々アップデートされているのです。Vyvoでは、こうした技術進化の行方を楽しみにしながら、あらゆる突破口と選択肢によって私たちのプラットフォームをさらに進化させることにつなげてゆき、すべてのユーザーに、より良い体験、より進化した体験を提供できるよう精進してまいります。
ハカン・コザクル
CTO
Vyvoグループ